2015年1月下旬、日本銀行は、金融政策決定会合でマイナス金利を発表しました。
そして、幾時と立たず、2月初旬、各銀行はマイナス金利を理由に預金利率を下げる動きを活発化させまています。
これはどういう意味・現象なのか?
金融専門家でもない一般人ですが、どういうことか素人なりに調べ考えてみました(間違ってる点も多々あるでしょうが、一般人としての考えです)。
「マイナス金利=預けると損」は、問題の上っ面に過ぎない。
マイナス金利と聞くと、「お金をあずけているとマイナスになる!」「お金を預けると損!」そんなイメージがすぐ浮かびます。私もその程度のイメージでした。
ですが、そこからなぜマイナス金利なの?どうしてそうなるの?という疑問が涌きます。
日銀がマイナス金利をあえて実施した意味。
そもそも、今回のマイナス金利は債権相場の流れでマイナスになったという相場の話ではなく、日銀が金融機関の当座預金にマイナス金利を決定したということです(※1)。つまりここに事の本質があるのです。我々一般預金者の預金がマイナス金利になるという話ではありません。
お金の蛇口を締め、利ざやや国債で楽に儲ける銀行
日銀がマイナス金利にしたのは、銀行が日銀に預ける当座預金に対しての話です。ここで銀行の現在の体質というもに触れておきます。
銀行は、集めた資金を日銀に預け、その利息と預金者に支払う利息の差額(利ざや)で簡単に利益を確保してきました(※1※2)。利ざやで儲けることは悪ではありませんが、利息をもらう相手は民間ではなく日銀です。
また、日本国の借金が総額1000兆円を突破という中、その国債を購入している金融機関、特に銀行は毎年労せずして膨大な国債利息収入を得ています。銀行はリスクを負う民間への貸出ではなく、とりあえずリスクの少ない国債を買っておけばその利息だけで安泰というわけです。
ただ、銀行が楽に儲けているというだけの話ならそれはそれでよいかもしれませんが、事はそう単純ではありません。
景気の好循環やインフレには世の中にお金の回ることが必要です。
お金がじゃぶじゃぶあるのは銀行です。そしてのその銀行がお金の蛇口を締めていては、一向に世の中にお金が回りません。
民間への融資を力を入れず国債の購入ばかりをしている銀行がまさにその状態です。
マイナス金利発表は、日銀の銀行へのムチ。
ゼロ金利政策、金融緩和、回すお金をどんどん供給しているのに一向にお金を民間に回さない銀行。
日銀は、景気対策・インフレ目標値に近づけるために、これまでの銀行への懐柔策から強硬策に変更したと見ることができます。
あえて関ヶ原の戦いで例えるなら、日銀が徳川家康、銀行が小早川秀秋。一向に動かない小早川秀秋(銀行)に徳川家康(日銀)が大砲を撃ち込み早く動けと催促をかける、といったところです。
マイナス金利のツケを国民に転嫁する銀行
日銀からマイナス金利というある意味三行半を突きつけられた銀行は、「そうだ、我々の本分はお金を世の中に巡らせることだ(よい融資先を開拓したり、貸付先の事業成功にも力添えしよう)。」と、国債利息依存体質を反省し企業努力を高める方向になれば問題ありません。
しかし、真っ先に取った行動は、自己保身です。利息収入が減らされるんなら、その穴埋めに国民への預金利息を下げて補填しよう。
努力する前に、「まずは努力しないでも大丈夫なように段取りしておこう」、ということです。民間企業なら、まず企業努力をして、それでも無理なら価格・料金に転嫁させてもらうという流れが筋ですが、銀行商店だと開口一番「価格上げます!」と。
銀行側の言い分としては、「民間にはお金を貸して儲けれそうな場所が少ない。リスクが高い!赤字になったら預金者や経済界が困るでしょ?」かもしれません。金融ジャーナリストの方々も、銀行の収益力が不安定になって逆効果だ、と日銀の施策を非難する論調も多いです。
ですが、そもそも融資先を見つけ、お金を貸して儲ける、それが銀行のプロフェッショナルとしての道じゃないのですか?
子供にお父さんの仕事は何?と聞かれて、「ゼロ金利で借りたお金で国債を買うだけの簡単なお仕事です。」と答えるのだろうか。
最後に思うこと。
以上、日銀のマイナス金利発表は、日銀から銀行への問いかけが本質です(※3)。
ただし、マイナス金利の実施が適用されるのは、これから預けられる当座預金についてであって、既に預けられている部分には適用がないとのこと。そのためマイナス金利決定による銀行側の影響はほとんどないとも言われています。いずれにしろ、日銀から銀行へのメッセージが送られたことには変わりがなく、銀行が今後どう動くかが見極められることになるでしょう。
日本のデフレ状態は、少子化という構造も大きく影響していて、単に銀行がお金をばらまけばそれで解決するなんて単純な問題ではありません。
景気が悪い(需要が少ない)から銀行がお金を回さないのか、銀行がお金を回そうとしないから景気が悪いままなのかは、鶏が先か卵が先の堂々巡りです。
しかし、銀行が日銀の金融緩和を受けながら、本筋である民間への融資に本腰を入れようとしないのもまた(日銀から見た)一つの事実です。
そして、楽に儲けられるときは、我々は一民間企業だと言ってその利益をすべからく享受しておいて、苦しくなったら、我々は公共性のある金融機関だから国が護れ、楽に稼げる術を確保させろ、というのは筋が違うのではないか、少なくもと公平性が著しく欠けるのではないかと思います。
民間の真っ当な企業なら、国の制度を利用(依存)して儲けるのではなく、自らの才覚でお金を稼いでいってこそ一人前と言えるのではないでしょうか。
※1 マイナス金利の実施により、当座預金利率0.1%が-0.1%に変わるそうです。
※2 当座預金利息で得られる銀行の利益は2200億円ほどだそうです。
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