日本商工会議所の三村明夫会頭は1日の定例会見で、企業の内部留保に対する課税が議論されていることに対し、
「内部留保課税は努力して、収益をあげている企業のやる気をそぐもので、経済原則に反する」として、
反対の立場を明確にした。
三村氏は「大企業の内部留保額が186兆円とされるが、1社当たり換算で358億円になるのに対し、
大企業の保有現金は113億円で、大部分は使われているということだ」との認識を示した。
その上で、「手持ちの現金は運転資金であり、景気の変動などへの対応に保険として必要だ」と説明する。
ソース:産経ニュース
内部留保課税案がなぜ出てきたかというと、会社が大きな利益を上げてもそれを従業員や経済に還元せず、会社内部に溜め込み続けていることが数字上明らかになったからです。
かっての不況時代、政府は、大企業を儲けさせればその利益が下層の市民たちに還流されて景気が良くなると熱弁し(トルクダウン思想)、企業の業績回復を後押ししてきました。当時からトルクダウンなど起きないという意見は強くありましたが、ふたを開けてみれば現実に企業は人件費を抑えたまま得た利益を社内に溜め込むという動きに出ました。
こんなことでは、景気が良くなるはずもなく、インフレの流れは起きません。、結局労働者は低く押さえつけた労働コストの中で身を削るしかないという状況です。
そこで政府は、企業の溜め込んだ内部留保にメスを入れる方策を模索しだしたわけですが、これに対して猛反発する経済界の姿は、まさに経済界の望んでいる景気状況を如実に示しています。
どいうことか。
まず経済界は景気が良くなるとは考えておらず、ゆるやかなインフレなど起きない(起こしたくない)と考えている。
経済界だって景気が良くなる方がいいに決まってるじゃん?と思うでしょう。
ですが、そうでもないのです。少なくともインフレに対しては消極的なのです。インフレとは金を持っている側から見るとお金の目減りでしかありません。物の値段が上がると困ると思われますが、実際に賃金も同時に上がっていく好景気インフレは、低所得労働者層にとっては得なのです。お金は稼げば増え状況なのだから。
逆に既に大金を貯めている人々にとっては持っているお金の価値が減少するだけの悪夢でしかありません。
経済界上層はお金を持っているからインフレに反対と単純に決めつけているわけではありません。
ことは内部留保です。もし将来インフレが起きるだろうと考えたら、どうします?インフレが起きれば、持っている資金の価値は減る一方です。だったら資金の内部留保なんで愚策は選びませんよね。つまり企業が内部留保を続けているということは、彼ら自身、インフレなんて起きないよ、逆にデフレで内部留保の価値が上がるかもぐらいに考えているという証左なのです。
インフレが起きないことを望んでいるわけですから、逆にインフレが起こりそうな施策には協力しませんよね。
銀行も経済界と同じくインフレ施策に協力せず、日銀からマイナス金利の刃を突きつけられる始末です。金融界・経済界がインフレ消極思想の中でインフレなんて起こるはずがありません。
いみじくも、日本商工会議所の三村明夫会頭は、
「手持ちの現金は運転資金であり、景気の変動などへの対応に保険として必要だ」
と述べているそうです。
「景気の変動への保険」。好景気への変動つまりインフレなら内部留保は保険にならないですよね。
つまり、この三村氏の発言は、将来の大不況(がくるだろう)に備えて資金を溜め込んでいるのだ!と吐露してしまっているとも解釈できるのです。
さて、この記事を書いたのは2016年9月ですが、10年後はどうなっているのでしょうね・・・。
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